おじいちゃんは電車に乗るのが怖いと言った

おじいちゃんは電車に乗るのが怖いと言った。それを受けて、おばあちゃんは、このひとは京都駅までの切符も買えへんと言う。

 

 

祖父は早朝散歩を日課としている。そのルートは、近くに住むわたしの両親の家が折り返し地点で、毎朝ピンポーンとインターホンを押す。家族は寝ているので応答はなく、あくまでも自分なりの区切りみたいなつもりであって、玄関から誰からでてくるのを期待しているわけでもなさそう。

祖父は仕事でKトラを乗り回す。安全運転の秘訣は、結局はアイコンタクトや、と言う。

また、顎の当たりにできたオデキを、ペンチで自分で引っこ抜いたりもする人だ。

そんな祖父が、電車に乗るのが怖いという。

 

わたしは普段、あたりまえに電車やバスで移動している。目的地までのルートを想定して、そこへ行くための電車を選んで、乗車し、ある場所で降りる。なぜそれをするかっていうと、時間を短縮できるし、楽できる。

わたしは小学校2年生で初めてひとりで電車にのった。オトナへの第一歩のような気がした。自分で外の世界を乗りこなしているような感覚があったのかもしれない。

 

動くものにからだを乗せている。

動くものの中でジャンプしても着地点は同じ、というのが慣性の法則だったっけ。でも、そのバスが突然運転手さんの気が変わって、別のところへ向かったり、バスジャックにあったり、ってこともなきにしもあらず。

 

祖父は、機関車なら怖くないというだろうか。わたしは乗ったことないけど。鉄のかたまりならば…。