2011-01-01から1年間の記事一覧

夜間歩行者

例のE坂から自宅まで、音を消して歩いてみた。 家々の音、地下に流れる下水道の音が、よく聴こえてくる。 一歩一歩慎重に歩かないと、衣擦れや靴が地面に触れる音が出てしまう。 だんだん、自分が透明人間になったような気がして、怖くなってくる。 信号を…

E坂にて

『マタドウロ(屠場)』をみて、同じ感覚を味わいたくなり近所を小一時間走ってみた。 途中、どうしょうもなく何往復もしたくなる坂道に出遭ってしまった。 駆け上がるときの、反重力と抵抗感が心地よく、6往復くらいした。すると、ぞろぞろと少年たちがや…

蝉女

台風の街を歩く。 ざっぱりとした風。 どこか恣意的な雨のリズム。 そわそわした家並み。 ちらほらと蝉が鳴いている。 お盆を過ぎたこの時期に居るのは、マイペースな蝉。台風の気配に触発されて末期とはちがう鳴き声を発している。それは、どこかエキセント…

ど も り

教室のようなところで、数人で何かの本を輪読している。 自分が重要だと思うセンテンスを選んで朗読するみたいだ。 進行役の人が、先生が生徒にするように、一人一人がチョイスしたセンテンスについての感想を述べる。 わたしの番が回ってきた。 なにやら(…

バスにて

203号に乗る。車内に乗客は多くない。 バスはいわゆる劇場型バス。前半分は車体に沿って椅子が設置されていて、立つ人のための空間が広い。一方、後半分は二人掛の席が左右にシンメトリーに配置され、席に着けば車内を存分に鑑賞できる。 私は、客席の一番前…

豆翁のこと

大阪のとある喫茶店。名前が豆翁。 70歳は超されているであろう女主人がひとりで切り盛りしている。店内は、カウンター席と社長席に分かれていて、社長席にはいつも誰かえらそうなおじさんと、そのナンバー2といったタイプの人が座っている。 私たちはいつ…