2019-08-19 無題 海か山なら 山がいい 湖か沼なら 沼がいい 抱擁という狭く窮屈なトンネルのなか やがて息ができずに藻掻きはじめる 数十年 そのトンネルの円環からようようすり抜け 気づくとわたしの爪の隙間には土が食い込んでいた 本か歌なら 歌がいい 目か口ならば 鼻がいい わたしはあなたではないはずなのに いつの間にかその境界がわからなくなる 正直であるなんて不可能なのだから せめて喉仏に佇むその語りのゆえんに出会いたい 裂け目はいつもわたしたちの内にある 渕に立ちつくす体が あちらにも こちらにも 8月18日