無題

海か山なら 山がいい

湖か沼なら 沼がいい

抱擁という狭く窮屈なトンネルのなか

やがて息ができずに藻掻きはじめる

数十年 そのトンネルの円環からようようすり抜け

気づくとわたしの爪の隙間には土が食い込んでいた

 

本か歌なら 歌がいい

目か口ならば 鼻がいい

わたしはあなたではないはずなのに

いつの間にかその境界がわからなくなる

正直であるなんて不可能なのだから

せめて喉仏に佇むその語りのゆえんに出会いたい

 

裂け目はいつもわたしたちの内にある

渕に立ちつくす体が あちらにも こちらにも

 

8月18日