フランシスフランシス

なんと一日のうちに、ベーコンとアリスの両フランシス展へ行くことができました。
 
 ベーコンの作品の、実物を見れて本当によかった。
 
よく言及される顔面の歪みやズレ、肉体の変形の描写というのは、実物は結構視えにくい(分かりにくい)ということに、帰りに図録を見て、改めて気付きました。
図版の方が変形の描写が視えやすいので、そのイメージが頭に入っていたのかな。
 
実作品に、ガラス板一枚挟んで、対面したら、想像上の生体の解剖図みたいで、画家が覚めた感覚で対象と向き合っている状況を追体験しているような気分でした。
削ぎ落としたり切り裂いたりしたときの生体の部位の有様は、究極的には肉塊とか管とか至極シンプルなものになる。そのシンプルさが奇形というか。
 
触覚的な感覚が伝わるこのようなイメージから、自ずと土方の「疱瘡譚」に展示が連なっていくのもよかったし、(教皇が如く)終止口をあんぐり開けてしまって、終わった頃にははぁーっと嘆息。私も初めて見たけど、子どもから大人まで、多くの人と「疱瘡譚」を見ているっていう状況もなんかよかった。
 
 
 
アリスの方は、出会うというか「その瞬間」に出くわす、という感じがした。
作り事(フィクション)かもしれないしそうでないかもしれないんだけども「その瞬間」というのがある。
 
彼はそれを、いつも待ちながら歩いている。ひょろっと長い手足は「その瞬間」を捕まえるのに最適なのだろう。
 
結構体当たりでひどい目にはっているけれども、その実ダメージが少なそうなのは、いつも肩の力が抜けているからかな。
 
竜巻とアリスの映像には、マットと枕が用意されていた。ごろんと寝転んで見る。力が抜ける。ああ、こんな感じでみても/みなくても良いんだなあ。それにしても、アリス、不死身。
 
欲を言えば、ほとんどの映像作品は作家のサイトで見れるようになっているので、絵画とかトレーシングを使った素描とかを会場でじっくり見たかったなあ。