音姫

トイレの個室によく音姫という機能が付いています。ボタンをおすと一定時間、流水音が流れる装置です。

 

この音についてのある発見。

それは音姫から、ミニマルミュージックのようなものがきこえてくるというもの。いちどそのフレーズを聞き取ってしまったら、もうその音階とリズムから逃れられません。しかし、音姫が鳴り止むと、すっと消えてしまいます。しかも、もう一度ボタンをおしたところで、二度とその同じフレーズを聞き取ることができない。

 

そもそも音姫の音は、小川のせせらぎをイメージした人口音です。その用途は、現実の音を消すための音。たとえば、鉛筆で書いた線は消しゴムで消すことが出来ますが、音という物体のないものを消すことはできません。

森に木を隠す方式で、特定の音を消すために、たくさんの音素が散りばめられている。これを、ある人は混沌と言い、ある人はノイズフルと言い、ある人は宇宙と言うのかもしれない。そんな仕掛けを持つ音姫とは、あらゆることを選別してしまうヒトの営みに対する大いなる挑戦なのかもしれない。